Azure OpenAI Serviceとは?何ができるのか、メリット、使い方をわかりやすく解説!
社内向けのChatGPT導入や、ChatGPTを組み込んだアプリケーションの開発・検討で「Azure OpenAI Service」(アジュール オープンエーアイ サービス)という言葉を耳にしたけど、
- 「Azure OpenAI Serviceってなに?」
- 「OpenAI APIとは違うの?」
- 「Azure OpenAI Serviceのメリットデメリットは?」
といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
Azure OpenAI Serviceは、MicrosoftとOpenAIの共同開発のサービスで、Microsoft Azure(クラウドプラットフォーム)の堅牢なセキュリティとコンプライアンスのもと安全にGPT-3.5 / GPT-4などのAIを利用できるサービスです。
そのため、日本企業でも特に高いセキュリティ水準が求められる大企業や自治体において利用されるケースが多くみられます。
この記事は、マイクロソフトの法人向けAIサービスAzure OpenAI Serviceについて、特徴や何ができるのか、OpenAI APIとの違い、メリットとデメリット、料金体系、利用可能なモデル、使い方についてわかりやすく解説します。
この記事が、Azure OpenAI Serviceの導入・活用の参考になれば幸いです。
目次
Azure OpenAI Serviceとは
Azure OpenAI Service(アジュール オープンエーアイ サービス)は、Microsoft Azure( クラウドプラットフォーム )上で、OpenAI社のChatGPTなどのAIモデルを利用できるMicrosoftの法人向けサービスです。
McrosoftとOpenAI社の共同開発で生まれたサービスです。
企業や開発者は、Azure OpenAI Serviceを活用することで、Microsoft Azureのセキュアな環境でOpenAI社のGPT-4 Turbo、GPT-4、GPT-3.5などのAIモデルを安全に利用できるほか、迅速かつ容易にGPT-4などのAIモデルを組み込んだアプリケーション構築ができます。
これらの特徴から、
- 大企業による従業員向けのChatGPT環境(社内ChatGPT)
- ChatGPTを組み込んだAIチャットボットなどのアプリケーション開発
において、Azure OpenAI Serviceを活用する事例が多くみられます。
日本においては、Azure OpenAI Serviceの一般提供開始から約8カ月で少なくとも560社以上の導入実績(23年10月時点)があると発表されており、評価の高いサービスであることがわかります。
参考:Microsoft公式 Azure OpenAI Service
日本企業のAzure OpenAI ServiceやChatGPTの活用事例については、以下の記事で詳しく紹介しているので参考にしてみてください。
関連記事:【12月最新版】ChatGPTを導入した日本企業の活用事例84選・24業種を徹底調査!
Azure OpenAI Serviceの特徴
Azure OpenAI Serviceには、
- 特徴1.高いセキュリティとデータ保護
- 特徴2.迅速かつ柔軟なアプリケーション構築
- 特徴3.クラウドベース
の3つの特徴があります。
特徴1.高いセキュリティとデータ保護
Azure OpenAI Serviceの最大の特徴ともいえるのが、高いセキュリティとデータ保護です。
Microsoft Azureは100種類を超えるコンプライアンス認証を持ち、その高いコンプライアンスとセキュリティ基準のもと、OpenAIのGPT-4などのAIモデルを利用できます。
Azureのセキュリティ機能として、データの暗号化、プライベートネットワークでの利用、Microsoft Entra ID 認証(旧称 Azure Active Directory; Azure AD)、コンテンツフィルタリング、監査ログ、脅威の早期発見など、多岐にわたるセキュリティ機能と統合して利用することができます。
これにより、機密性が高い開発環境の構築が可能となり、厳しいセキュリティポリシーを要求する金融機関、大企業、自治体などからも高い信頼を得ています。
Azure OpenAI Service は、OpenAI GPT-4、GPT-3、Codex、DALL-E、Whisper モデルを使用した高度な言語 AI を Azure のセキュリティとエンタープライズの約束と共にお客様に提供します。 Azure OpenAI は OpenAI と共に API を共同開発し、互換性を確保し、一方から他方へのスムーズな移行を保証します。
Azure OpenAI を使用すると、顧客は OpenAI と同じモデルを実行しながら、Microsoft Azure のセキュリティ機能を使用できます。 Azure OpenAI では、プライベート ネットワーク、リージョンの可用性、責任ある AI コンテンツのフィルター処理が提供されます。
引用:Microsoft公式”Azure OpenAI Service とは“
特徴2.迅速かつ柔軟なアプリケーション構築
Azure OpenAI Serviceは、
- OpenAIのGPT-3.5、GPT-4などの言語モデル
- 画像生成モデルDALL-E
- 音声認識モデルWhisper
- Embedding models
- Fine-tuning models
などOpenAIの多様なAIモデルに加えて、Microsoftが提供するAzure上の幅広いAIサービス・ツールとの統合が容易なため、迅速かつ柔軟にAIを組み込んだアプリケーションを構築できます。
特徴3.クラウドベース
Azure OpenAI Serviceは、クラウドベースのサービスのため、導入にあたって大規模なサーバやシステムを構築せずに、すぐ導入することができます。
また、稼働状況に応じて柔軟にスケールアップ・スケールダウンし、リソースの効率的な運用を可能にします。
Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIとの違い
Azure OpenAI Serviceで利用できるOpenAIのAIモデルは、OpenAI APiが提供するものと同じです。
では、Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIには違いがあるのでしょうか?
Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIの主な違いは、下表の通りです。
比較項目 | Azure OpenAI Service | OpenAI API |
---|---|---|
AIモデル精度 | ◎ 同等 | ◎ |
可用性 | ◎ SLAで99.9% | △ SLAなし |
セキュリティ/データ保護 | ◎ | △ |
料金 | 概ね同じ | 概ね同じ |
新モデルの利用 | △ OpenAIより遅れる | ◎ OpenAIが先行提供 |
導入スピード | △ 利用申請による許可制 | ◎ 即日利用可 |
サポート体制 | ○ 有償ポートあり | △ 有償サポートなし |
Azure OpenAI Serviceのメリット
OpenAI APIに比べて、
- 可用性(稼働率99.9%以上を保証)
- セキュリティ/データ保護対策
- サポート(有償サポートプランあり)
の3点はAzure OpenAI Serviceの方が優れており、利用するメリットといえます。
Azure OpenAI Serviceのデメリット
一方、OpenAI APIに比べて、
- 新モデルの利用
- 導入スピード
の2点においては、OpenAI APIの方が優れており、Azure OpenAI Serviceのデメリットといえるでしょう。
まとめ
結局、「どちらのサービスの方が絶対的に優れている」というわけでなく、何を重視するか次第でどちらのサービスを選択したらいいかは変わってきます。
Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIのより詳しい違いやメリットデメリットについては、以下の記事で計17項目で比較して詳しく解説しているので参考にしてみてください。
Azure OpenAI Serviceで利用できるAIモデル
Azure OpenAI Serviceで利用できるAIモデルは、基本的にはOpenAI APIが提供しているモデルと同じです。
ただし、OpenAIの新モデルはOpenAI APIが先行提供して、その後にAzure OpenAI Serviceでも提供開始されるため、モデルのラインナップには多少の違いがあります。
本記事執筆時点(24年2月9日時点)で、Azure OpenAI Serviceで利用可能なAIモデル(東日本リージョン)は下表の通りです。
※)リージョンによって、利用可能なモデルは異なります。
分類 | モデル | Azure OpenAI Service |
---|---|---|
言語モデル | GPT-4-Turbo | プレビュー版 東日本:× |
言語モデル | GPT-4 | ○ |
言語モデル | GPT-3.5-Turbo | ○ |
Aiistants API | Code Interpreter | ○ |
Base models | ・davinci-002 ・babbage-002 | ○ |
Fine-tuning models | ・davinci-002 ・babbage-002 ・GPT-3.5-Turbo (4K) | ○ |
Embedding models | Ada | ○ |
画像生成モデル | DALL-E | プレビュー版 東日本:× |
音声認識モデル | Whisper | プレビュー版 東日本:× |
音声合成モデル | TTS | × |
この表の通り、OpenAI社の基本的なモデルはAzure OpenAI Serviceでも利用できますが、
- GPT-4-Turbo
- DALL-E
- Whisper
については、現在プレビュー版(正式リリース前の試用版)となっています。
上記3モデルについては、東日本リージョンでは現在利用できません(他の一部リージョンでは利用可能)。
ただし、アップデートも早いので、最新情報についてはMicrosoftの公式サイトをご確認ください。
参考:Azure OpenAI Service モデル(公式)
Azure OpenAI Serviceの料金
Azure OpenAI Serviceの料金体系は、
- 利用した分だけ課金される従量課金制
- モデルによって料金が異なる
- 初期費用はかからない
と、OpenAI APIの料金体系と基本的には同じです。
各モデルの料金も基本的にはOpenAI APIの料金と同じですが、一部のモデルでは異なっています。
詳しい料金については、以下のMicrosoftの公式サイトをご確認ください。
参考:Azure OpenAI Serviceの価格
関連記事:【24年最新版】ChatGPT(OpenAI)のAPI料金体系まとめ
Azure OpenAI Serviceの使い方
Azure OpenAI Serviceの利用開始の方法を解説します。
Azure OpenAI Serviceでは、利用にあたって事前に利用申請を行い、Microsoftからの承認を得る必要があります。
この点は、アカウントを作成して即日APIを利用できるOpenAI APIとは異なります。
以下では、利用申請の内容を中心に利用開始のステップをて解説します。
- Step.1 Azureサブスクリプションの作成
- Step.2 Azure OpenAI Serrviceの利用申請
- Step.3 リソースを作成してモデルをデプロイ
Step.1 Azureサブスクリプションの作成
Azure OpenAI Serviceの利用にあたって、まずはAzureサブスクリプションの作成が必要です。
Azureサブスクリプションの作成自体は無料です。
また、Azure は従量課金制で、無料アカウントの維持料金がなく、前払いのコミットメントもなく、つでもキャンセルすることができます。
以下のAzure公式サイトから手順に沿って作成します。
参考:Azure公式サイト
Step.2 Azure OpenAI Serrviceの利用申請
Azure OpenAI Serviceの利用には事前申請が必要です。
現在は申請を承認された企業顧客およびパートナーのみがAzure OpenAI Serviceを利用できます。
Azure OpenAI Serviceの申請は、以下の申請フォームから申請します。
参考:Azure OpenAI Serviceの申請フォーム
申請の入力項目は、Step1.で作成したAzureサブスクリプションIDの他、企業名、企業住所、氏名、メールアドレス(会社ドメインのみ可)など20項目以上に及びます。
主な入力項目を抜粋すると、以下の通りです。
1.First Name
2.Your Last Name
3.いくつのAzureサブスクリプションIDでAzure OpenAI Serviceにアクセスするか?
4.一つ目のAzureサブスクリプションID
5.会社のEメールアドレス
6.会社名
7.会社住所(番地、建物、番号等)
8.会社住所(市区町村)
9.会社住所(都道府県)Company State/Province
10.会社住所の郵便番号
11.会社住所の国
12.会社のWebsite
13.会社の電話番号
14.マイクロソフトとコンタクトがある場合は担当者のフルネーム(任意)
15.マイクロソフトとコンタクトがある場合は担当者のEメールアドレス(任意)
16.この申請が自社の申請であり顧客の代理としての申請ではないことを確認
17.利用するモデルを選択
(選択肢)
□GPT-3.5, GPT-3.5 Turbo, GPT-4, GPT-4 Turbo, and/or Embeddings Models
□DALL-E 2 and/or DALL-E 3 models (text to image)
□OpenAI Whisper model (Speech-to-Text)
□GPT-4 Turbo with Vision
18.選択したモデルのユースケースを選択
19.Azure利用規約等への同意
20.Azure OpenAI Serviceのデータの取扱いを確認
②1.サービス改善のためのアンケート(任意)
入力項目は多いですが、あまり難しい入力項目はありません。
ただ、一つポイントとしては、事前にどのモデルを使用するのか(No.17)、そのモデルをどのようなユースケースで使用するのかを細かく選択する必要があり、承認後はそのユースケースの範囲内でAzure OpenAI Serviceを利用する必要があるので、慎重に選びましょう。
もし、承認後にユースケースを追加したい場合は、別途申請を行う必要があります。
顧客は、サービスを使用するすべてのユース ケースを証明する必要があります (顧客が選択できるユース ケースは、最初の登録フォームの質問 22 で希望のモデルを選択した後にフォームに入力されます)。最初のオンボーディング後にユースケースを追加したいお客様は、このフォームを使用して追加のユースケースを送信する必要があります。
引用:Microsoft公式”Limited access to Azure OpenAI Service”より日本語訳
Azure OpenAI の使用は、登録フォームで選択されたユースケースに限定されます。 Microsoft は、お客様にこの情報の再確認を要求する場合があります。使用例と避けるべき使用例の詳細については、こちらをご覧ください。
申請後、承認されるとMicrosoftからメールが届きます。
申請から承認のまでの期間は、(企業や時期などによって異なりますが)数営業日程度です。
なお、以前はGPT-4モデルを利用する場合はこの申請とは別途申請が必要でしたが、GPT-4を利用するための別途申請は不要になりました。
Step.3 リソースを作成してモデルをデプロイ
Microsoftからの承認のメールが届いたら、Azureポータルにログインして、
- Azure OpenAIリソースを作成
- モデルをデプロイ
して、Azure OpenAI Serviceを利用できます。
具体的な手順については、Microsoftの以下の記事を参考にしてください。
参考:Azure OpenAI Service リソースを作成してデプロイする
まとめ
この記事は、マイクロソフトのAzure OpenAI Serviceについて、特徴や何ができるのか、OpenAI APIとの違い、メリットとデメリット、料金体系、利用可能なモデル、使い方について解説しました。
Azure OpenAI Serviceについてまとめると、以下の通りです。
まとめ
・Azure OpenAI Seviceは、セキュアな環境で安全にOpenAIのAIモデルを利用できる
・OpenAI APIに比べて、セキュリティ/データ保護、可用性、サポートが優れているのがメリット
・そのためセキュリティ水準の要求が厳しい金融機関、大企業、自治体に選ばれることが多い
・基本的にはOpenAI APIと同じモデルが利用できるが、新モデルについてはOpenAIよりも提供が遅れる
・料金体系については、使った分だけ課金される従量課金制。モデルよって料金が異なる
・基本的にはOpenAI APIと同じ料金だが、一部異なる
・Azure OpenAI Serviceの利用は申請による許可制
この記事が、Azure OpenAI Serviceの導入・活用の参考になれば幸いです。
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