【徹底比較】Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIの違いは?詳しく解説!
- 「Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIってなにが違うの?」
- 「セキュリティ的に安全なサービスはどっち?」
- 「Azure OpenAI ServiceとOpenAI API、どちらを使えばいい?」
といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事は、Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIの違いについて詳しく比較・解説した上で、どちらのサービスを選択すればいいのか、について解説します。
この記事が、Azure OpenAI ServiceやOpenAI APIの活用の参考になれば幸いです。
目次
Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIの違い
Azure OpenAI Serviceは、Microsoft Azure 上で、OpenAI社のGPY-3.5 / GPT-4、DALL-EなどのAIモデルを利用できるMicrosoftの法人向けAIサービスです。
利用するAIモデルはOpenAIと同じモデルですが、Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIに違いはあるのでしょうか?
以下では、Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIの違いについて、比較して詳しく解説します。
関連記事:Azure OpenAI Serviceとは?何ができるのか、メリット、使い方をわかりやすく解説!
Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIの比較結果
Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIの比較結果は、下表の通りです。
比較項目 | Azure OpenAI Service | OpenAI API |
---|---|---|
提供会社 | Microsoft | OpenAI |
利用方法 | API連携 | API連携 |
モデルラインナップ | 最新モデルの提供は OpenAIより遅れる | OpenAIが先行提供 |
モデル精度 | OpenAIと同じモデル | – |
レイテンシー | ◎ | ○ |
可用性 | SLAで99.9%保証 | SLAなし |
API認証 | ・API key ・Microsoft Entra ID | API key |
接続方法 | ・インターネット接続 ・閉域接続 | インターネット接続 |
データの学習 | モデルの学習に利用されない | モデルの学習に利用されない |
データ保持 | 悪用監視のため30日間保存 | 悪用監視のため30日間保存 |
プロンプト インジェクション対策 | コンテンツフィルタが 初期設定されている | 特になし |
セキュリティ | ◎ | △ |
料金 | 概ね同じ | 概ね同じ |
サポート | 有償サポート | サポートなし |
利用開始スピード | 事前申請による許可制 | 即日利用可能 |
リージョン | 東日本リージョンあり | 米国のみ |
準拠法 | 日本の法律 | 米国カリフォルニア州法 |
次に、特に大事なポイントについて解説します。
モデル
OpenAIが提供するモデルは、基本的にAzure OpenAI Serviceでも利用できるようになるので、モデルのラインナップについて大きな違いはありません。
ただし、OpenAIの最新モデルがリリースされた際は、Azure OpenAI ServiceはOpenAI APIの提供に遅れて開始されるので、OpenAIの方が最新モデルをすぐに利用できるという利点があります。
モデル精度
GPT-3.5、GPT-4、DALL-EなどのAIモデルは、Azure OpenAI ServideはOpenAIと同一のモデルなのでモデルの精度には違いはありません。
ただし、OpenAIのモデルのアップデートにより性能向上があった際には上述の通り、OpenAI APIが先行して提供されるので、Azure OpenAI Serviceがアップデートver.を利用開始するまでの間だけ性能に違いが出ることはあります。
レイテンシー
両者の公開データによる比較はありませんが、実際にそれぞれを利用している限りAzure OpenAI Serviceの方が安定して優れています。
可用性
可用性については、
- Azure OpenAI Service:SLAで99.9%以上の稼働を保証
- OpenAI:SLAの規定なし
と、Azure OpenAI Serviceに軍配が上がります。
API認証
Azure OpenAI Serviceは2つの認証方法が用意されており、API ket 又はMizrosoft Entra ID( 旧Azure Active Directory)による認証が可能です。
- Azure OpenAI Service:API key、Microsoft Entra ID( 旧Azure Active Directory)
- OpenAI API:API key
Azure OpenAI Serviceの認証方法
引用:Azure OpenAI Service の REST API リファレンス
- API キー認証: この種類の認証の場合、すべての API 要求で、
api-key
HTTP ヘッダーに API キーを含める必要があります。 クイック スタートに、この種類の認証を使用して呼び出しを行う方法に関するガイダンスが用意されています。- Microsoft Entra ID 認証: Microsoft Entra トークンを使用して API 呼び出しを認証できます。 認証トークンは、
Authorization
ヘッダーとして要求に含まれます。 指定するトークンの前にBearer
を付ける必要があります (例:Bearer YOUR_AUTH_TOKEN
)。 Microsoft Entra ID を使用した認証に関する攻略ガイドをお読みください。
参考:Azure OpenAI Service の REST API リファレンス
接続方法
Azure OpenAI Serviceはインターネット接続に加えて、仮想ネットワーク(VNet)、プライベートエンドポイントを使用した閉域接続(プライベート接続)も可能です。
つまり、インターネットを経由せずに、GPT-4などのAPIを利用することができます。
これは、金融機関、大企業、自治体などのセキュリティポリシーの厳しい企業・組織において、重要なポイントになることも多いでしょう。
- Azure OpenAI Service:インターネット接続、閉域接続
- OpenAI API:インターネット接続
Azure OpenAI は VNET とプライベート エンドポイントをサポートしていますか?
はい。Azure AI サービスの一部として、Azure OpenAI は VNET とプライベート エンドポイントをサポートしています。 詳細については、Azure AI サービス仮想ネットワークに関するガイダンスを参照してください
引用:Azure OpenAI Service に関してよく寄せられる質問
データの学習
Azure OpenAI ServiceもOpenAI APIも、ユーザーが入力したデータはモデルの学習に利用されないので、違いはありません。
Azure OpenAI Serviceでユーザーが入力したデータ等に関する取扱いについては、以下の通り定められています。
プロンプト (入力データ) と生成物 (出力データ)、Embedding、トレーニング データの取扱いについて
- 他のお客様はご利用いただけません。
- OpenAI では利用できません。
- OpenAI モデルを改善するためには使用されません。
- Microsoft またはサードパーティの製品やサービスを改善するために使用されることはありません。
- リソースで使用するために Azure OpenAI モデルを自動的に改善するためには使用されません (トレーニング データを使用してモデルを明示的に微調整しない限り、モデルはステートレスです)。
- Fine-tuningされた Azure OpenAI モデルは、お客様専用に提供されます。
Azure OpenAI サービスは Microsoft によって完全に管理されています。Microsoft は Microsoft の Azure 環境で OpenAI モデルをホストしており、本サービスは OpenAI によって運営されるサービス (ChatGPT や OpenAI API など) と対話しません。
引用:Azure OpenAI Service のデータ、プライバシー、セキュリティ
なお、個人向けのChatGPT(APIではないWebサービス)では、オプトアウトしない限り入力したデータがモデルの学習に利用されて情報漏えいするリスクが指摘されています。
関連記事:【完全版】ChatGPTの危険性は?リスクと対策を解説!
データの保持
Azure OpenAI ServoceもOpenAI APIも、悪用の監視のために入力データと出力データは30日間保存されるので、違いはありません。
ただし、Azure OpenAI Serviceでは、例外的に一部のケースでは30日間の保存をされないように変更することも可能です。
Azure OpenAI の不正行為の監視は、行動規範やその他の該当する製品条件に違反する可能性のある方法でのサービスの使用を示唆する、繰り返し発生するコンテンツや動作のインスタンスを検出し、軽減します。悪用を検出して軽減するために、Azure OpenAI はすべてのプロンプトと生成されたコンテンツを最大 30 日間安全に保存します。(以下で説明するように、顧客が承認され、不正行為の監視をオフに構成することを選択した場合、プロンプトや生成物は保存されません。)
引用:Azure OpenAI Service のデータ、プライバシー、セキュリティ
プロンプトインジェクション対策
Azure OpenAI Serviceでは、プロンプトインジェクション対策を含む有害なコンテンツの出力を防止するために、コンテンツフィルタリングと不正使用監視機能が含まれています。
OpenAI APIの場合は、コンテンツフィルタリングの機能はないため、企業や開発者が自らプロンプトインジェクション対策を行う必要があるため、Azure OpenAI Serviceに軍配が上がるでしょう。
Azure OpenAI サービスの有害な使用のリスクを軽減するために、Azure OpenAI サービスにはコンテンツ フィルタリングと不正使用監視機能の両方が含まれています。コンテンツ フィルターの詳細については、「Azure OpenAI Service コンテンツ フィルター」を参照してください。不正行為の監視の詳細については、「不正行為の監視」を参照してください。
引用:Azure OpenAI Service のデータ、プライバシー、セキュリティ
セキュリティ
Azure OpenAI Serviceは、世界最高水準に厳格なMicrosoft Azureのセキュリティとコンプライアンスの基準に準拠しています。
また、Microsoft Azureのセキュリティ機能と統合することで、上述の通りMicrosoft Entra ID認証によるアクセス制御や、閉域接続によるデータやリソースの保護、などOpenAIに比べてよりセキュアな構成が実現できます。
以上のように、セキュリティ/データ保護に関しては、Azure OpenAI Serviceの方が優れています。
料金体系
料金体系は、Azure OpenAI ServiceもOpenAI APIのどちらも
- 利用した分だけ課金される従量課金
- モデルによって料金は異なる
- 初期費用はなし
で、料金体系は同じです。
各モデルの料金は、一部のモデルで料金が異なりますが、ほとんどの料金はAzure OpenAI ServiceもOpenAI APIも同じですので、料金面では両社に大差はないといえるでしょう。
参考:Azure OpenAI Service の価格
関連記事:【24年最新版】ChatGPT(OpenAI)のAPI料金体系まとめ
サポート
OpenAI APIは、チャットでの問い合わせ、コミュニティForumでの問い合わせが可能です。
Azure OpenAI Serviceでは、Azureサポートプランが用意されており、有償プランによっては 24 時間年中無休のメールと電話によるテクニカル サポートも受けられるため、Azure OpenAI Serviceの方がサポートは充実しています。
- Azure OpenAI Service:Azureサポートプラン(有償プランあり)
- OpenAI API:チャット、コミュニティForum
参考:Azureサポートプラン
参考:OpenAIコミュニティForum
利用開始スピード
OpenAI APIは、アカウントを作成して即日利用開始できます。
他方、Azure OpenAI Serviceは、事前申請による許可制となっています。
事前申請の内容は、難しいものではありませんが、申請から承認まで数営業日程度かかるので、利用開始スピードについては、OpenAi APIに軍配が上がります。
Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIどちらを使えばいい?
Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIの比較結果を見たうえで、
「では、どちらのサービスを使ったらいいんだろう?」
といった疑問を持たれる方もいあるかもしれません。
上記の比較で見た通り、「どちらのサービスの方が絶対的に優れている」ということはありません。
つまり、自社の規模感、エンジニアチーム、インフラ環境、利用の目的なども踏まえて、何を重視するか次第でアーキテクチャを選択することになるでしょう、
その上で、これまでご支援してきた事例からすると、例えば以下のように使い分けられるケースが比較的多いです。
Azure OpenAI Serviceを選択するユースケース
- 金融機関、大企業、自治体などが社内利用する場合
- 金融機関、大企業、自治体向けのサービスに利用するとき
- AzureのAIサービス等と連携して利用する場合
- 特に安定稼働が求められるサービスで利用する場合、etc
OpenAI APIを選択するユースケース
- Azure OpenAI Serviceでは利用できない最新モデルを利用・調査したい場合
- プロトタイプ、PoCでスピーディーに検証したい場合
- 一般の企業で社内利用する場合
- ライトなBtoCサービスで利用する場合、etc
まとめ
Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIの違いについて比較した上で、どちらのサービスを選択すればいいのか、について解説しました。
まとめると、以下の通りです。
まとめ
・Azure OpenAI Serviceは、可用性、セキュリティ/データ保護、サポートに優れている
・OpenAI APIは、最新モデルの利用と導入スピードで優れている
・総じて、どちらのサービスの方が絶対的に優れている、とはいえない
・どちらのサービスを使うかは、自社の特性や利用目的などによって異なる
この記事が、Azure OpenAI ServiceやOpenAI APIの活用の参考になれば幸いです。
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