【企業向けAIチャット】Bing Chat Enterpriseの料金・有効化の方法・使い方を徹底解説!
2023年7月18日(現地時間)、米マイクロソフトが業務用チャットAI「Bing Chat Enterprise」を発表しました。
マイクロソフトが個人向けに提供してきた「Bing Chat」の企業向けプランで、従来の「Bing Chat」にデータ保護機能を搭載し業務利用できるようにしたものです。
Bing Chat Enterpriseは現在プレビュー版として一部のプランのユーザー限定で利用できます。
この記事では、Bing Chat Enterpriseの特長や利用条件・料金プラン、有効化するための設定方法や使い方、ChatGPTとの機能比較、メリットデメリットをどこよりも詳しくわかりやすく解説します。
ChatGPTなどのチャットAIを企業で導入・活用したいと考えている企業の担当者の方は必見です。
目次
Bing Chat Enterpriseの特長
Bing Chat Enterpriseは、米マイクロソフトがこれまで個人向けに提供されてきたBing Chatをベースに、業務用途向けにデータ保護機能が搭載されたChatGPTのような会話型AIです。
Bing Chat Enterpriseには、次のような3つの特長があります。
特長1.データ保護
Bing Chat Enterpriseは、業務利用できるようにデータ保護が強化されています。
例えば、Bing Chat Enterpriseのチャットで入力したデータや出力したデータは保護されており、外部に漏れることはありません。
チャットデータは保存されず、マイクロソフトがアクセスすることも出来ないようになっています。
また、チャットデータがLLMのトレーニング(学習)に使用されることもありません。
特長2.Web検索(Web上の最新情報にアクセス)機能が標準装備
個人向けのBing Chatと同じように、Bing Chat EnterpriseもWeb検索機能がついておりWeb上の最新情報にアクセスして回答されます。
また、回答にあたっての情報ソースも引用元として表示されるため、ファクトチェックを行いやすいのが利点です。
さらに、グラフ、チャート、画像を含む回答(出力)も可能です。
特長3.Microsoft Edgeでの利用が必須
2023年7月現在、Bing Chat Enterpriseの利用はMicrosoft Edge(ブラウザ)のみに限定されています。
将来的にはサードパーティー製のWebブラウザー(Chromeなど)でも利用できるようになる予定とのことです。
Bing Chat Enterpriseの利用条件と料金プラン
Bing Chat Enterpriseは、2023年7月18日より以下のプランでプレビュー版が提供されています。
利用条件
現時点では、以下プランのユーザー限定でプレビュー版が利用できます。
- Microsoft 365 E3
- Microsoft 365 E5
- Microsoft 365 Business Standard
- Microsoft 365 Business Premium
料金プラン
現時点、プレビュー版は上述の4プランのユーザーについて追加費用なしで利用できます。
将来的には、スタンドアロンサービスとして、1 ユーザーあたり月額 5 ドルで利用できる予定とのことです。
Bing Chat Enterpriseの有効化の方法
Bing Chat Enterpriseを利用するには、導入する企業で有効化の設定を行う必要があります。
実際に設定が反映されるまでには、2~4時間ほどかかる場合があるとのことです。
では、Bing Chat Enterpriseを有効化する設定方法を詳しく解説します。
Step.1 :Microsoft Search in Bing 設定がオンになっていることを確認
まず、Microsoft365管理センターの Microsoft Search in Bing 設定がオンになっていることを確認します。
ただし、デフォルト設定ではMicrosoft Search in Bing 設定はオンになっているので、過去にオフの設定に変更していない限り、このステップは省略しても問題ありません。
※Microsoftアカウントのグローバル管理者(Global admin)または検索管理者(Search admin)の権限で行う必要があります。
Step.2 :Bing Chat Enterprise の「Admin Controls」のページで有効化する
Bing Chat Enterprise のAdmin Controlsページにアクセスし、以下の画面通りに「Turn On」に設定を変更して、「Confirm」をクリックします。
※Microsoftアカウントのグローバル管理者(Global admin)または検索管理者(Search admin)の権限で上記ページにアクセスする必要があります。
「Turn On」に変更して、「Confirm」をクリックすると以下の画面が表示されます。
これで、Bing Chat Enterpriseを有効化する設定は完了です。
なお、2023年8月17日にはデフォルトでBing Chat Enterpriseが有効化されるため、この設定は不要となる予定です。
逆に、「Bing Chat Enterprise」を有効にしたくない場合は、手動で無効化の設定を行う必要があります。
Step3:MicrosoftのビジネスアカウントでログインしてBing Chatにアクセス
Step2までで、企業単位でのBing Chat Enterpriseの有効化の設定は完了です。
ここからは、企業に所属するユーザーごとの利用方法です。
Microsoftのビジネスアカウントにログインして、Bing.comのページや、Nicrosoft Edge(ブラウザ)のサイドバーからアクセスすれば利用できます。
これまでの設定が完了していれば、以下のようなBing Chat Enterpeiseの画面が表示されます。
Microsoft Edgeのサイドバーからも以下のようにBing Chat Enterpriseを利用できます。
Bing Chat EnterpriseとChatGPTを比較してみた
Bing Chat Enterpriseの有効化の設定方法は利用方法を解説してきました。
では、Bing Chat Enterpriseの性能はどれくらい使えるものなのでしょうか?
以下では、例として2つのタスクで実際にBing Chat Enterpriseを活用して、ChatGPTと性能を比較してみました。
タスク1:最新情報を含むリサーチ
Web上の最新情報を含むリサーチ作業を、ChatGPTとBing Chat Enterpriseそれぞれに以下のプロンプト(指示文)で指示を出して、回答結果を比較してみました。
日本の個人向け生命保険の新契約件数について、2017年度から2022年度までの推移を教えてください。
▼ChatGPT(GPT-4、WebChatGPT)の回答結果
ChatGPTの標準機能では、2021年9月までの情報しか学習しておらず、最新情報へのアクセスが出来ないため、WebChatGPTの解説記事で紹介したWebChatGPT機能を活用しました。
結果としては、WebChat機能を有効にしても、最新の情報取得が上手く出来ませんでした。
▼Bing Chat Enterpriseの回答結果
Bing Chat Enterpriseに同じプロンプトで指示したところ、以下の通り情報ソースの提示も行った上で、回答してくれました。
しかし、ファクトチェックをしたところ、情報ソース自体は正しいものを引用してくれていましたが、その情報ソースから取得する数字がほとんど間違っていました。
(2017年度の数字は正しいですが、2018年度以降の数字が全て間違っていました)
最新情報を含むリサーチ作業をChatGPTとBing Chat Enterpriseを比較した結果、ChatGPTはWebChatGPTを活用しても情報量の多いリサーチは苦手で回答してくれませんでしたが、Bing Chat Enterpriseの方は回答結果自体は間違っていましたが、正しい情報ソースは提示してくれたので、リサーチ作業に関してはBing Chat Enterpriseの方が少しだけ優れているといえるかもしれません。
タスク2:指定するWebページの読み取り・要約
指定するWebページの読み取りと要約作業をChatGPTとBing Chat Enterpriseそれぞれに以下のプロンプト(指示文)で指示を出して、回答結果を比較してみました。
以下のURLの内容を読み取って、要約してください。 https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/automotive-sales-in-japan-by-month
▼ChatGPT(GPT-4、Web Pilot)の回答結果
ChatGPTの標準機能では、Webページの読み取りは出来ないため、ChatGPT Plus(GPT-4)でWebページの読み取りを可能にするプラグイン「Web Pilot」を活用しました。
結果、以下の通り非常に正確に対象ページの内容を読み取り、重要な数字を拾い上げて正しく要約してくれました。100点といっていい出来です。
▼Bing Chat Enterpriseの回答結果
Bing Chat Enterpriseにも同じプロンプトで指示したところ、抽出する数字が全体的に間違っていて、要約の内容も薄っぺらくて中途半端な結果でした。
指定するWebページの読み取りと要約作業をChatGPTとBing Chat Enterpriseで比較した結果、ChatGPTはWebページの内容を正確に読み取り、要約する内容も完璧でした。
他方、Bing Chat Enterpriseは抽出する数字が誤っていたり、要約する内容も不十分だったりと、情報の要約のタスクではChatGPTに軍配が上がる結果となりました。
Bing Chat Enterpriseのメリット・デメリット
これまでの内容を踏まえて、企業が業務利用するチャット型AIとして、Bing Chat Enterpriseのメリットとデメリットをまとめてみましょう。
メリット
メリット1:データ保護がされる
上述の特長で記載した通り、Bing Chat Enterpriseはチャットで入力・出力したデータが保護されており、チャットデータも保存されないためデータが外部に漏れることはなく、マイクロソフトですら同データにアクセス出来ず、またLLMのトレーニング(学習)にも利用されない仕様となっており、データ保護が強化されているので、安心して利用することが可能です。
メリット2:Microsoftの一部プラン利用者は無料でプレビュー版を利用できる
上述の通り、Microsoft 365 E3、同E5、Business Standard、Business Premiumプランのユーザー限定でプレビュー版を無料で利用できるので、コスト的な導入ハードルは低いでしょう。
メリット3:Web検索(最新情報へのアクセス)や情報ソースの提示がされる
ChatGPTの標準機能では活用できない、Web検索(最新情報へのアクセス)が標準機能で利用出来るため、一部のリサーチ作業などで役に立ちそうです。
また、回答において引用した情報ソースを提示してくれるため、ファクトチェックを行いやすいのは助かります。
ただし、上述の通り精度はあまり高くない印象なので、回答結果を鵜吞みにせず確りとファクトチェックを行うことが重要です。
デメリット
デメリット1:Microsoftの一部プラン利用者でないと利用できない
2023年7月現在、Microsoft 365 E3、同E5、Business Standard、Business Premiumプランのユーザー以外はそもそもBing Chat Enterpriseを利用することが出来ません。
ただし、将来的には同プランのユーザー以外にもスタンドアローン版が月額5ドルで提供される予定です。
デメリット2:チャットの過去データを閲覧できない
データ保護の関係で、チャットの履歴が一切残らないため、業務利用する上で過去のチャットを参照したり、同じプロンプトを活用したい時などに不便に感じることが多そうです。
デメリット3:ChatGPT(GPT-4)よりも使い勝手や性能が悪い印象
標準機能の性能は大差ないかもしれませんが、ChatGPT Plusで使える便利な拡張機能(Code InterpreterやCustom Instructions )やプラグイン機能なども含めると、Bing Chat EnterpriseはChatGPTよりも性能が落ち、使い勝手が悪い印象があります。
【あわせて読みたい】企業向け社内ChatGPTサービスのおすすめ5選
Bing Chat Enterpriseのような企業向けのチャット型AI/社内ChatGPTサービスには、他にもおすすめのサービスがいくつかあります。
生成AIのプロが厳選したおすすめの社内ChatGPTサービス5選について、それぞれのメリット・デメリットを徹底比較しているので、社内業務でChatGPTの活用を検討される方はあわせて参考にしてみてください。
まとめ
この記事では、米マイクロソフトが発表した企業向けのチャットAIであるBing Chat Enterpriseを紹介しました。
Bing Chat Enterpriseは、業務利用に必要不可欠なデータ保護機能が搭載されており安心して利用しやすいサービスですが、まだ一部ユーザーしか利用できない、チャット履歴が見れない、性能が低い(印象)などのデメリットもあります。
企業がChatGPTのようなチャットAIの導入や活用を検討する際は、Bing Chat Enterpriseは候補の一つとなりますが、それ以外の法人向けの社内ChatGPTサービスなどとも機能面や料金面などで比較検討するのがよいでしょう。
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