【企業版ChatGPT】OpenAI「ChatGPT Enterprise」とマイクロソフト「Bing Chat Enterprise」の違いは?徹底比較してみた!
ChatGPTを企業が導入・活用するにあたって、情報セキュリティやプライバシーなどのデータ保護対策が大きな課題ですが、それらのセキュリティ・プライバシー対策を施して企業が安全に業務で活用できるような企業版ChatGPTサービスが複数誕生してきました。
代表的な企業版ChatGPTサービスとして、米マイクロソフトが7月に「Bing Chat Enterprise」をリリース、8月にはChatGPTを開発する米OpenAI社が「ChatGPT Enterprise(チャットGPTエンタープライズ)」をリリースしました。
- 「マイクロソフトの「Bing Chat Enterprise」とOpenAIの「ChatGPT Enterprise」はなにが違うの?」
- 「企業でChatGPTの導入・活用を検討しているけど、「Bing Chat Enterprise」と「ChatGPT Enterprise」でどっちの方がおすすめなの?」
という疑問や悩みをお持ちの向けに、マイクロソフト「Bing Chat Enterprise」とOpenAI「ChatGPT Enterprise」の違いを徹底比較して、どちらのサービスが自社に合っているの選択のポイントをかわかりやすく解説します。
ChatGPTの導入・活用を検討されている企業の方は、是非参考にしてください。
目次
「Bing Chat Enterprise」と「ChatGPT Enterprise」の比較ポイント
マイクロソフトの「Bing Chat Enterprise」とOpenAIの「ChatGPT Enterprise」について、以下の9つの項目で徹底比較します。
- ポイント1.セキュリティ・プライバシー対策
- ポイント2.チームコラボレーション機能
- ポイント3.AIモデルの性能
- ポイント4.スピード・利用回数制限
- ポイント5.便利な付加機能
- ポイント6.料金
- ポイント7.導入のしやすさ
- ポイント8.対象企業の規模
ポイント1.セキュリティ・プライバシー対策
同点
Bing Chat Enterprise:★★★★★
ChatGPT Enterprise :★★★★★
どちらのサービスもセキュリティやプライバシー対策は徹底しており、企業が有するデータやチャットで入力するデータがAIに学習されず、第三者に漏えいされないようにデータ保護対策が徹底されております。
ここは、企業版ChatGPTとして最重要な項目なので、両社ともに万全に対策されています。
ポイント2.チームコラボレーション機能
勝者:OpenAIのChatGPT Enterprise
Bing Chat Enterprise:★
ChatGPT Enterprise :★★★★★
チームコラボレーション機能は圧倒的に、「ChatGPT Enterprise」の方が優れています。
「ChatGPT Enterprise」には、次のような利用者管理機能などが搭載されています。
管理コンソールによる一括メンバー管理
SSO(シングルサインオン)
ドメイン認証
ユーザーの使用状況の管理のためのダッシュボード
他方、マイクロソフトの「Bing Chat Enterprise」には、上記のようなチームコラボレーション機能は搭載されていません。
ポイント3.AIモデルの性能
勝者:OpenAIのChatGPT Enterprise
Bing Chat Enterprise:★★★
ChatGPT Enterprise :★★★★★
どちらものサービスもAIモデルは「GPT-4」を搭載していますが、「Bing Chat Enterprise」はGPT-4をベースにマイクロソフトが一定のカスタマイズを行ったモデルとなっています。
そのためか、実際に使ってみたところChatGPTのGPT-4モデルの方が、カスタマイズを施した「Bing Chat Enterprise」よりも全般的に応答性能が高く感じました。
特に、長文の生成・要約能力に関しては、OpenAIのGPT-4に軍配が上がります。
ポイント4.スピード・利用回数制限
勝者:OpenAIのChatGPT Enterprise
Bing Chat Enterprise:★★★
ChatGPT Enterprise :★★★★★
ChatGPT Enterpriseは、ChatGPT Plusに比べてGPT-4への無制限のアクセスと、最大2倍速の高速パフォーマンスを特長としています。
他方、Bing Chat Enterpriseは、スピードは速いものの利用回数制限が1つのテーマにつき30ターンまで、1日合計300ターンまでの制限があります。
従って、利用回数制限が一切なく最大2倍速の高速パフォーマンスを誇るOpenAIのChatGPT Enterpriseに軍配が上がります。
ポイント5.便利な付加機能
勝者:OpenAIのChatGPT Enterprise
Bing Chat Enterprise:★
ChatGPT Enterprise :★★★★★
機能に関してはChatGPT Enterpriseの圧勝です。
ChatGPT Enterpriseには、次のような機能が搭載されておりChatGPT Plusに比べても非常に便利な機能が搭載されています。また、チームメンバー間での共有可能なチャットテンプレートなどは、企業の多くの従業員で使う場合に重宝されると思います。
・高度なデータ分析(旧Code Interpreter)への無制限アクセス
・4倍長い文字入力が可能(32,000トークンのコンテキストウィンドウ)
・チームメンバー間で共有可能なチャットテンプレート
・API使用の無料クレジット
他方、Bing Chat Enterpriseには特に企業向け特有の機能などは搭載されておらず、必要最低限のAIチャットのみ使える、といった感じです。
ポイント6.料金
勝者:マイクロソフトのBing Chat Enterprise
Bing Chat Enterprise:★★★★★
ChatGPT Enterprise :★
マイクロソフトのBing Chat Enterpriseは、Microsoft365などの課金ユーザーについては追加料金なし、つまり実質無料でBing Chat Enterpriseを利用できます。
さらに、Microsoft365などに契約していない企業向けにはスタンドアローン版として月額5ドルでBing Chat Enterpriseを提供予定、と発表されています。
他方、ChatGPT Enterpriseの料金は公表されておらず「使用状況やユースケースによって異なる」としており、個別にOpenAIへ問合せが必要です。
推測の域は出ませんが、上記のリッチな機能面などを考えると、月額5ドルよりは高い料金になることが予想されます。
ただし、導入企業の利用者数によるディスカウントが予想されるので、利用者数が非常に多い場合は月額5ドルよりも安く提供される可能性はあるかもしれません。
料金については、推測が含まれますが殆どの導入企業にとってはBing Chat Enterpriseの方が安いといえるでしょう。
ポイント7.導入のしやすさ
勝者:マイクロソフトのBing Chat Enterprise
Bing Chat Enterprise:★★★★★
ChatGPT Enterprise :★★
Bing Chat Enterpriseでは、Microsoft365などの契約企業の場合、特に申し込み手続きなど不要で管理画面上の簡単な設定で即日利用を開始することが可能なので、非常に手軽に導入できます。
他方、ChatGPT Enterpriseを導入する場合、まずはOpenAIのセールスチームに問合せを行う必要があります。つまり、Bing Chat Enterpriseのように自分で即日設定して利用を開始するようなことは出来ません。
問い合わせをしてから利用開始までどれくらいの期間がかかるか明記されていませんが、OpenAIのセールスチームが人手でサポートすることを考えると、それなりの時間がかかることが予想されます。
従って、導入のしやすさ(手軽さ)やスピードでは、マイクロソフトのBing Chat Enterpriseに軍配が上がります。
ポイント8.対象企業の規模
勝敗無し
「Bing Chat Enterprise」:-
「ChatGPT Enterprise」 :-
これは優劣ではありませんが、両サービスでそれぞれターゲットとしている企業の規模に大きな違いがあります。
明記こそされていませんが、OpenAIのChatGPT Enterpriseは少なくとも従業員数1000人以上の大企業向けの高付加価値なサービスとなっているため、従業員数の少ない中小企業では導入することが出来ません。
他方、マイクロソフトのBing Chat Enterpriseについては、特に従業員数/利用者数の制限もなく、従業員がいないような小規模事業者でも導入できるサービスとなっています。
なお、OpenAIはより小規模のチームでも利用できるセルフサービス的なプラン(「ChatGPT Bsuiness」)を今後提供予定と発表していますので、中小企業にとっては「ChatGPT Bsuiness」が今後の検討候補になるかもしれません。
企業規模や目的によってマッチするサービスは違う
以上の比較結果からわかるように、ひとくちに企業版ChatGPTサービスといっても、サービスの内容・機能や料金、対象となる企業が大きく異なることがことがわかったと思います。
では、どのようにサービスを選んだらいいのか、それぞれのサービスに向いている企業の特長を以下で桑井ク解説します。
OpenAIのChatGPT Enterpriseに向いている企業
ChatGPT Enterpriseは、企業での高度な活用に最適化された非常に高性能で便利な機能が搭載されたハイスペックな企業版ChatGPTといえます。
従って、従業員数が多い大企業で、ChatGPTの導入・活用に十分な予算を取れて、どのような業務で活用するかなどビジョンも明確になっていて、全社で活用していくことに経営陣含めた合意形成がされているような会社にとってChatGPT Enterpriseは十分な機能を有する最適なサービスです。
ただ、予算は取れてもChatGPTを業務で活用していくことに経営陣含めた合意形成やコミットがない場合、導入して短期間で効果が出ずに中途半端に解約してしまう、といったケースがよくみられます。
そうならないためにも導入にあたって、どのよう業務で活用してどの程度の効果を期待するのか、それを実現するためのロードマップやタイムライン、社内で定着化させていくための研修・トレーニングのリソース確保などについて、所感部署も定めた上で経営陣含めた合意形成をして取り組むことが重要です。
こんな企業におすすめ
・大企業。最低でも従業員数(利用者数)は1000人以上
・月間で100万円程度の予算を取れる
・導入した後の従業員への定着や研修などもリソースをかけて行える
・ChatGPTを使った具体的な活用用途や導入効果がわかっている
マイクロソフトのBing Chat Enterpriseに向いている企業
Bing Chat Enterpriseは、多くの機能は搭載されていないものの、どんな企業規模の会社でも非常に低コスト(または実質無料)かつ簡単に導入できる手軽な企業版ChatGPTサービスです。
そのため、従業員数の少ない企業や、ChatGPTでどのように活用するかまだ具体化していけど、今後の本格的な活用のために試しでみたい、といった用途に向いてます。
こんな企業おすすめ
・従業員は1000人未満の企業(特に中小企業)
・ChatGPTに月数十万円の予算はかけられない
・ChatGPTで何ができるかよくわかっていないが試してみたい
OpenAIの「ChatGPT Enterprise」については、以下の記事詳しく解説しているのでぜひ参考にしてみてください。
マイクロソフトの「Bing Chat Enterprise」については、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてみてください。
最後に
この記事では、ChatGPTの活用を検討する企業の方向けにOpenAIの「ChatGPT Enterprise」(チャットGPTエンタープライズ)と、マイクロソフトの「Bing Chat Enterprise」の違いについて、セキュリティ・プライバシー対策、チームコラボレーション機能、AIモデルの性能、スピード・利用回数制限、便利な付加機能の有無、料金、導入のしやすさ、対象企業の規模、の計8つの比較ポイントで徹底比較しました。
両サービスはそれぞれ一長一短があり、企業の規模や目的などに応じて最適なサービスが異なることがわかったと思います。
この記事が自社に最適な企業版ChatGPTサービス選びのお役に立てば幸いです。
以下の記事では、主に日本企業が提供する企業版ChatGPTツールを厳選して紹介・比較していますので、「ChatGPT Enterprise」や「Bing Chat Enterprise」以外のツールも知りたい、比較検討したい、という方はあわせて参考にしてみてください。
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